2026年02月08日
2025年11月〜12月に行った美術館・博物館(中世の神々,ウィーン工房,お茶の文化創造博物館)
國學院大學博物館の中世日本の神々展。行くのをさぼっていたら会期の最終日になってしまったが,教員による講演が開催されていて,オープンキャンパスの日でもあったのでかなりの人出であった。大学博物館らしさを味わえたと言えるかもしれない。個人的にはほぼ摩多羅神の掛け軸を見にいっただけに近いのだが(もちろん東方天空璋を意識している),その摩多羅神に代表されるように,近代に記紀神話に塗り潰される以前の神道の多様さを感じることができたので良かった。前にもブログに書いたことがあるが,登山で地方に旅行するようになってから明治期に塗りつぶされた信仰の多さが最近はけっこう気になっていて,見るたびに残念な気持ちになる。また,大学博物館らしいというと常設展が國學院大の歴史の展示になっていて,國學院大の出自がやや特殊なだけに,こういうのを見るのもけっこう面白い。
パナソニック汐留美術館のウィーン・スタイル展。19世紀前半のビーダーマイヤー期に成立した様式が世紀末の分離派運動から派生したウィーン工房で注目を浴びて復活し,実用とデザイン性の両立を目指した家具や生活用品が制作されたというストーリーライン。世紀末美術は全西欧的な動きであるし,美術がデザイン領域に進出する(機械工業の時代に手工業に美を見出す)のもアーツアンドクラフツ運動を想起するにオーストリア特有とも言えないが,ビーダーマイヤー期を模範としたとする”縦”の意識は目新しく,比較するとウィーン工房の作風と確かに似ていて,面白かった。ビーダーマイヤー期の美術はウィーン体制の成立による自由主義的改革志向の政治的挫折により,ロマン主義的情熱が感傷や実用に変容した面白い事例として特筆すべき現象であるが,世間的な知名度はおろか美術史学上でも知名度が低い。今回のような形で注目を浴びると,一応はロマン主義美術を専攻していた人間としては嬉しいし,世紀末芸術がこのような形でロマン主義とつながるというのは知らなかったので勉強になった。できるならば今度はデザイン史ではなく,絵画史でビーダーマイヤー期の作品を取り上げる展覧会があるともっと嬉しい。
また本展覧会はウィーン工房のデザイナー・職員や支援者に女性が多かったことに注目して,彼女たちを紹介する展示にもなっていた。女性に注目する展覧会は珍しくなくなってきたものの,こういう個々の美術潮流や組織の中での活躍となると具体的には知らないことが多い。今後もこういう特集があるとありがたい。
汐留にあるおーいお茶ミュージアム。上記のパナソニック汐留美術館の帰り際に寄った。旧新橋停車場の館内にある入館無料の小さい博物館である。喫茶店と後述するお茶の文化創造博物館が併設されていて,いずれも伊藤園の経営である。3つとも2024年5月1日オープンらしいので,かなり新しい博物館となる。通りでこんなに目立つ立地で,パナソニック汐留美術館に行くなら気づかないはずがないのに知らなかったわけだ。ということは伊藤園は汐留に本拠地があるのかなと思ったらそういうことはなく,本社ビルは西新宿五丁目に存在した。旧新橋停車場の経営権を獲得できたから有効活用しているだけかもしれない。
本館ではおーいお茶の歴史や製造過程が紹介されていて,無料にしてはボリュームがある。じっくり見ると30分以上使うだろう。カテキンの酸化は進行が急激なので緑茶を真空に閉じ込める必要があり,これが技術的にかなり難しく,ゆえに1985年にやっと缶入り緑茶飲料が成立したというのは知らなかった。 通りで成立が遅いはずである。また企業博物館によくある自社製品がずらっと並べてあるコーナーがあり,その1985年の缶から現在までのデザインの変遷を追うことができる。人によっては懐かしいかもしれない。私は2005年くらいからしか見覚えがないので,そこまで懐かしさを感じなかったのだが……おーいお茶って昔はペットボトルが緑色なんだっけ。
同じく汐留の旧新橋停車場館内にある,お茶の文化創造博物館。こちらは有料。展示内容は日本の喫茶史で,目新しい内容はないが,体験型の展示もあって集団で行くと面白いと思う。どういう集団でもわいわいと楽しめるのではないか。『ニュクスの角灯』読者としては,年表にちゃんと大浦慶がいたのは良い。一番良かった展示物は飛騨の円空仏に団茶を埋め込んだもの。下の写真の通り奇抜である。
なお,年表がところどころ間違っていたり怪しかったりしたので職員さんに伝えておいた。少なくとも年表の安土桃山時代の始まりが1577年になっているのはよくわからない(茶の歴史ではそこで区切るのが普通という根拠等があるなら年表中に明示した方が良い)。どなたか行って修正または追記されているか確認してもらえると個人的には嬉しいかもしれない。
國學院大學博物館。会期最終日で教員による講演も開催されていたし、オープンキャンパスの日でもあったのでかなりの人出。個人的にはほぼ摩多羅神の掛け軸を見にいっただけに近いのだが、その摩多羅神に代表されるように、近代に記紀神話に塗り潰される以前の神道は信仰が多様であるな。 pic.twitter.com/T55Gh30ahx
— DG-Law/稲田義智 (@nix_in_desertis) November 30, 2025
パナソニック汐留美術館のウィーン・スタイル展。19世紀前半のビーダーマイヤー期に成立した様式が世紀末の分離派運動から派生したウィーン工房で注目を浴びて復活し,実用とデザイン性の両立を目指した家具や生活用品が制作されたというストーリーライン。世紀末美術は全西欧的な動きであるし,美術がデザイン領域に進出する(機械工業の時代に手工業に美を見出す)のもアーツアンドクラフツ運動を想起するにオーストリア特有とも言えないが,ビーダーマイヤー期を模範としたとする”縦”の意識は目新しく,比較するとウィーン工房の作風と確かに似ていて,面白かった。ビーダーマイヤー期の美術はウィーン体制の成立による自由主義的改革志向の政治的挫折により,ロマン主義的情熱が感傷や実用に変容した面白い事例として特筆すべき現象であるが,世間的な知名度はおろか美術史学上でも知名度が低い。今回のような形で注目を浴びると,一応はロマン主義美術を専攻していた人間としては嬉しいし,世紀末芸術がこのような形でロマン主義とつながるというのは知らなかったので勉強になった。できるならば今度はデザイン史ではなく,絵画史でビーダーマイヤー期の作品を取り上げる展覧会があるともっと嬉しい。
また本展覧会はウィーン工房のデザイナー・職員や支援者に女性が多かったことに注目して,彼女たちを紹介する展示にもなっていた。女性に注目する展覧会は珍しくなくなってきたものの,こういう個々の美術潮流や組織の中での活躍となると具体的には知らないことが多い。今後もこういう特集があるとありがたい。
会期ぎりぎり,パナソニック汐留美術館のウィーン・スタイル展。19世紀前半のビーダーマイヤー期に成立した様式が世紀末の分離派運動から派生したウィーン工房で注目を浴びて復活し,実用とデザイン性の両立を目指した家具や生活用品が制作されたというストーリーライン。 pic.twitter.com/lc70n2J9f4
— DG-Law/稲田義智 (@nix_in_desertis) December 16, 2025
汐留にあるおーいお茶ミュージアム。上記のパナソニック汐留美術館の帰り際に寄った。旧新橋停車場の館内にある入館無料の小さい博物館である。喫茶店と後述するお茶の文化創造博物館が併設されていて,いずれも伊藤園の経営である。3つとも2024年5月1日オープンらしいので,かなり新しい博物館となる。通りでこんなに目立つ立地で,パナソニック汐留美術館に行くなら気づかないはずがないのに知らなかったわけだ。ということは伊藤園は汐留に本拠地があるのかなと思ったらそういうことはなく,本社ビルは西新宿五丁目に存在した。旧新橋停車場の経営権を獲得できたから有効活用しているだけかもしれない。
本館ではおーいお茶の歴史や製造過程が紹介されていて,無料にしてはボリュームがある。じっくり見ると30分以上使うだろう。カテキンの酸化は進行が急激なので緑茶を真空に閉じ込める必要があり,これが技術的にかなり難しく,ゆえに1985年にやっと缶入り緑茶飲料が成立したというのは知らなかった。 通りで成立が遅いはずである。また企業博物館によくある自社製品がずらっと並べてあるコーナーがあり,その1985年の缶から現在までのデザインの変遷を追うことができる。人によっては懐かしいかもしれない。私は2005年くらいからしか見覚えがないので,そこまで懐かしさを感じなかったのだが……おーいお茶って昔はペットボトルが緑色なんだっけ。
同じく汐留,旧新橋停車場の館内にある「おーいお茶ミュージアム」。おーいお茶の歴史や製造過程が紹介されていて,無料にしてはボリュームがある。カテキンの酸化は進行が急激なので技術的にかなり難しいことをしており,だから1985年にやっと缶入り緑茶飲料が成立したというのは知らなかった。 pic.twitter.com/KH2xs9mmQj
— DG-Law/稲田義智 (@nix_in_desertis) December 16, 2025
同じく汐留の旧新橋停車場館内にある,お茶の文化創造博物館。こちらは有料。展示内容は日本の喫茶史で,目新しい内容はないが,体験型の展示もあって集団で行くと面白いと思う。どういう集団でもわいわいと楽しめるのではないか。『ニュクスの角灯』読者としては,年表にちゃんと大浦慶がいたのは良い。一番良かった展示物は飛騨の円空仏に団茶を埋め込んだもの。下の写真の通り奇抜である。
なお,年表がところどころ間違っていたり怪しかったりしたので職員さんに伝えておいた。少なくとも年表の安土桃山時代の始まりが1577年になっているのはよくわからない(茶の歴史ではそこで区切るのが普通という根拠等があるなら年表中に明示した方が良い)。どなたか行って修正または追記されているか確認してもらえると個人的には嬉しいかもしれない。
さらに同館内,同じく伊藤園が運営する「お茶の文化創造博物館」。開館して1年の若い博物館。展示内容は日本の喫茶史で,目新しい内容はないが,体験型の展示もあって集団で行くと面白いと思う。年表にちゃんと大浦慶がいたのは良い。一番良かった展示物は飛騨の円空仏に団茶を埋め込んだもの。奇抜。 pic.twitter.com/CRA2H9IRdf
— DG-Law/稲田義智 (@nix_in_desertis) December 16, 2025
Posted by dg_law at 18:28│Comments(0)