2026年05月25日

2026年大相撲五月場所の感想

横綱・大関が5人中2人休場で始まり,最終的に霧島1人となった。この時点で霧島の優勝は固く,実際場所の終盤までそのように推移したのだが,意外にも霧島が3敗に後退したため大混戦となり,若隆景との優勝決定戦までもつれ,若隆景が勝つという決着となった。これを優勝争いが面白かったと評してよいものかどうか迷う。また,先場所もそうだったが先場所にもまして日毎の土俵の出来の差が大きく,淡白に終わった日もあれば熱戦が多かった日もあり,その意味でも評価に困る場所であった。関連して待った・つっかけがやけに連鎖する日とほぼ全く無かった日も分かれていて,これも何とも言えない。

優勝した若隆景は,今場所は立ち合いの出足が鋭く,後は持ち前の技能でよく攻め込んでいた。反応もよく,相手の動きに機敏に対処できていたから,単純に絶好調だったと言えよう。後はケガなくもう二場所調子が続くかどうか。なお,若隆景の優勝は25場所ぶりで,これは史上3位の間隔とのこと(1位は琴錦の43場所,2位は照ノ富士の30場所)。優勝同点の霧島ももちろん悪くない出来で,優勝決定戦の若隆景は立ち合いの当たりが数年に一番級の出足だったから負けたのは仕方がないと言えよう。ただ1人のこった大関の責任は果たした。来場所は綱取りになることが明言されており,それ自体は過去の事例に鑑みても普通である。しかし,ハードルは13勝以上の優勝で,優勝を逃した時点で14勝でも見送り,優勝しても12勝だと見送りになると思われる。平成以降だと二場所に優勝無し,または二場所計24勝で昇進した事例は存在しない。今場所優勝していれば来場所13勝同点や次点でも良かったし,今場所13勝優勝だったら来場所は12勝同点や次点で良かった。本割か優勝決定戦か,いずれかであと一つ勝てなかったのが非常に痛い。


個別評。豊昇龍は初日のアクシデントが本当にいたたまれない。何度も書いているが,どうも気負いすぎて無理をする傾向が横綱昇進以後ずっと続いていて呪いのようになっていて不憫である。まあ本人が横綱として一度優勝する以外に処方箋もなさそうであるが……琴櫻は途中負け越しでこちらも全くの予想外であった。メンタルが原因ではないかとNHKの解説やネットでは散々言われていたが,蓋を開けてみると場所前に腰痛を発症しており,それが下がると脆い原因であった。腰痛は腰痛で難しいケガではあり,高安のように長引くと大関から陥落するかもしれない。霧島は既述の通り。休場の二人のうち,大の里はともかく,安青錦はいきなり大関陥落になる休場で思い切った決断である。来場所10勝はできそうなのであまり心配されていないが,私は一発勝負はけっこう怖いと思っている。

関脇・小結。若隆景は既述の通り。熱海富士は日毎の出来が違いすぎ,立ち合いの当たりが強くそのまま攻め込める日と,漫然と当たって鈍重な取組になる日がはっきりしていた。当たってみないと当人も今日の調子がわからないような感じはした。調子の良い日でも若隆景に負けており(今場所を代表する大熱戦ではあっったが),まだそこに実力差があることも判明した。なお,今場所の熱海富士は霧島に当たっておらず,この対戦が見られなかったのは少し残念である。千秋楽は宇良でなく,番付通り熱海富士で良かったのではないか。琴勝峰は先場所に続いて好調で,上位総当たりでも勝ち越した。先場所評に「中途半端にしか上位に当たらない地位だったために星が伸びたところがあり,上位陣との取組を見ると上位に定着しうる地力とは言えなさそう」と書いていたのだが,良い意味で裏切られた。琴勝峰も割とパワーがあり,今場所は大栄翔にも立ち合いで当たり勝っていた。スピードについていければこのまま上位で取れそうである。

前頭上位。藤ノ川は気風の良い相撲で今場所も土俵を沸かせたが,やや動きすぎて自滅するという,昔の日馬富士のような負け方も目立った。地力が追いついていない感じがして大敗もありうるかなと思われたが,最終的に(立ち合い変化も交えて)7勝,負け越し1点にとどめたのは大したものだ。義ノ富士はやっと真価が発揮された形で,押しても組んでも強い正統派の相撲が見られて満足した。しかし,正統派であるがゆえに明確に地力の差がある上位陣には順当に勝てないところがあり,今場所に負けた面々を見ても藤凌駕以外は霧島・若隆景・琴櫻である。横綱・大関の不在がで大勝したという感じもする。王鵬が四つ相撲でけっこう勝っていた印象。やはり彼はどちらでも取れるのではないか。

前頭中盤……は全然書くことがない。ここが今場所の出来が日毎に違った原因かもしれない。伯乃富士はこの地位なら当然とも言えそうな10勝。左四つになれれば相当強い。ケガが多いことだけは気をつけてほしい。

前頭下位。今場所は玉鷲がとうとう力尽きたのが最大のニュースかもしれない。見るからに足のケガが重くて馬力が出ておらず,それでも必死に土俵を務めた姿は胸を打った。幕内連続出場記録は途切れてしまうことになるが,まだ関取としての連続出場記録は継続できそうで,十両でがんばってほしい。というか玉鷲なら幕内に復帰しても驚かない。あとは宇良・琴栄峰・藤凌駕・若ノ勝が好調であった。宇良は今場所も基本はまっすぐ当たって押して攻めていくが,守勢に回ると途端にトリッキーな動きに変わって相手を翻弄する。その切り替わりに相手の力士がついていけない。宇良を倒すなら有無を言わせず押し切ってしまうのが得策だろう。琴栄峰は逆転での勝利が多かった。足腰が強い証拠と言えるだろうか。あの綺麗な四股の賜物かもしれない。終盤はいきなり上位に当てられて戸惑っていた様子であった。藤凌駕は幕内二場所目,若ノ勝は新入幕で新顔の二人であるが,どちらもなかなかパワーのある押し相撲で良い。藤凌駕がもう少し機敏に押せると,若ノ勝はもう少し突きの回転が早いと躍進できそう。


幕内の予想番付は過去になく作りやすく,割と当たるのではないか。当たっていなかったら審判部が星取とは別の基準を強く適用した結果になると思われる。十両に下がるのは時疾風,竜電,欧勝海,玉鷲。十両から上がってくるのは尊富士,一意,阿武剋,大青山。また,十両から幕下に下がるのは錦木,大花龍,白鷹山。本来であれば栃大海も落ちる成績だが,幕下上位に成績優秀者が少なく助かりそう。幕下から十両に上がるのは嵐富士,大皇翔,丹治で,丹治を上げずに白鷹山を残す判断はありうる。また逆に栃大海を落とすなら豪刃雄が上がるが,この入れ替えをやる可能性は非常に低い。

2026年五月場所



この記事へのコメント
更新お疲れさまです。
2横綱3大関の豪華番付でしたが、皆勤したのは1大関のみというのはさすがに寂しい場所でした。ただ、皆勤した役力士4名のうち、2人が決定戦で争い、新関脇2名は、どちらも勝ち越し。番付上位者としての力量はひとまずは示せた点はよかったのかなと。なお、上位休場もあり、筆頭〜四枚目も2桁敗戦者はいないという結果に。

優勝した若隆景は、かなり好調だったのではないかと。熱海富士勢は今場所屈指の熱戦。ラスト三日の平幕戦はいずれも格の違いを見せつけるもの、見事でした。大関昇進に関しては、これがあと2場所続くかどうか。彼の場合は、今場所休場した上位力士3人との合口が良くないのが不安なところ。

霧島は、序盤から中盤にかけては内容も良かった感じですが、終盤からあまり勢いがみられず、若隆景に並ばれた時点で危うさは感じました。宇良を圧倒はしましたが、決定戦は見事な相撲をとられ完敗。熱海富士戦が順当に組まれていたら危うかった気もしています。
両関脇。琴勝峰の方が先に勝ち越すとは、彼に失礼ですが、思っていなかったです。今場所はどっしりと落ち着いて取れていた印象。面相撲的な琴勝峰と、日ごとの出来にムラがある熱海富士はなんとなく対照的。

来場所は、11勝を挙げて活躍した義ノ富士ややっとトンネルを抜けた感のある王鵬が小結に。これだけの上位メンバーが揃う中、14勝以上あげれば、綱取りもいいかなと感じたりします。特例復帰やカド番脱出もなかなかの難度な気もしますが、果たして。
Posted by gallery at 2026年05月25日 10:55
千秋楽の三役揃い踏みが寂しい場所で、代表の挨拶文句も寒々しいものでした。高安と朝乃山という人気力士も休場、今場所のチケット購入者が気の毒な気もします。

先場所優勝した大関の霧島、中盤までは好調だったものの、結局優勝を逃がしたのは、平幕優勝が次の場所で勝てない姿が重ならないでもありません。若隆景は強かったですが、隆の勝相手にはあっさり負けたり、それでもそういう取りこぼしの少ない力士が順位を上げていくという事なのでしょう。

心不全で休んでいた翠富士が勝ち越し、炎鵬も勝ち越し。病気や怪我の力士の取り組みはハラハラします。ベテラン力士の番付がズルズルと下がっていくのも、仕方ないとは言え、寂しさが。鳰の湖は勝ち越しましたが、富士東や北播磨、天風や芳東も勝てなくなってきました。

パリ巡業もニュースに話題になるのでしょうか。来場所は、せめて役力士が千秋楽まで取り続けてもらいたいものです。
Posted by EN at 2026年05月27日 21:19
>gallery さん
ありがとうございます。けが人が多いのは大相撲の常ではありますが,今回は幕内の上位に固まっていましたね。番付崩壊にならなかったのは解禁した力士を褒めるしかない。
若隆景は言われてみると休場した3人との合い口が悪いですか。今場所はそういう運もあったかもしれません。
霧島の終盤は失速したというほどでもないですが,若隆景に比べると疲れてましたかね。熱海富士と順当に組まれていたら……も割と同意で,だからこそ番付通りの取組で良かったようにも思います。宇良と組ませるならもっと早い日付でよかった。
琴勝峰は確かに面相撲のようなムラがありますね。四つ相撲の力士でもたまにこういう人はいる。
来場所は義ノ富士と王鵬も楽しみです。

>ENさん
確かに霧島も若隆景もなかなか連続して調子が続かない。霧島はその中でも何とか大関になったので,やはり地力はあるのでしょうが,優勝となると厳しかった。
翠富士はニュースで聞いた時に驚きましたが,勝ち越して安心してます。炎鵬は意外とぎりぎりの勝ち越しでしたね。宮城野部屋をどうするのかという話題で場所後も騒がしいですが,実際に気になるところではあります。炎鵬自身はまだまだ引退しなさそう。個人的には炎鵬が引退したタイミングで部屋復活でもいいのではないかと思います。
ベテラン勢の苦境というと玉鷲が象徴的ですが,竜電や(今場所勝ち越したとはいえ)御嶽海なんかもなかなか苦しいですね。
パリ巡業も話題になると思います。盛り上がると嬉しいです。
Posted by DG-Law at 2026年06月01日 02:04